本サイトのGallery (1~6)に登場する挿絵画家と彫師の略伝を以下にまとめている。Gallery 7 は画家の単独作品である。
Gallery 3 のHall編纂The Book of British Balladsのみ彫師の名前も明かされているが、他は挿絵画家の名前のみである。
(長時間を要する作業のため、かなりの期間にわたって「製作中」の状態であることをお断りする。)


(製作中)

    Galleries
Barber Charles Burton Barber (1845–94).イギリスの画家。子供とペットという題材で大きな成功を収め、愛犬家のヴィクトリア女王からの注文で、孫たちと犬と一緒の女王などの作品を残している。作風も、まるで写真かと思わせるほどのリアリスティックなものからスケッチ風のものまで多様であったが、動物画家としての定評ある技量から今日まで人気を博している。 Smith_2 / Miscellany 
Barnes Robert Barnes (1840–95). Illustrated London Newsに対抗して1869年に創刊された週刊The Graphic紙の有能な挿絵画家の一人として活躍。そこに連載されたThomas HardyのThe Mayor of Casterbridge (1886)の挿絵が有名。The Graphic紙寄稿者にはHardyのほかに、George Eliot、Anthony Trollopeなど。 Smith_2
Branston Frederick William Branston (1805-49). Hall編纂のThe Book of British Ballads (London, 1842 & 1844)における挿絵彫師の中心人物の一人であり、全2巻に収録されている詩人16名のバラッド詩18篇中7作品を受け持っている。独りで担当した作品3篇(Scottの"The Eve of St. John”8枚、Surteesの"Barthram’s Dirge”2枚、Tickellの"Colin and Lucy”4枚)、他の彫師と分担しているものの内訳は、Lewisの"Sir Agilthorn”2枚、Leydenの"The Mermaid”5枚、Lindsayの"Auld Robin Grey”2枚、Scottの”Glenfinlas”3枚である。 Hall
Christie James Elder Christie (1847-1914).  スコットランドの肖像画家・風俗画家。ロバート・バーンズの詩に寄せた挿絵でも有名。 Smith_2
Clausen Sir George Clausen (1852-1944). イギリスの画家(油彩、水彩)、版画家。クラウゼンは印象派の強い影響を受けて近代の代表的な風景画家となったが、風景を描く上での最も重要な主題は光であると考えた。田園や農民の生活を描く作品を多く残しているが、第一次世界大戦では、公式の「戦争画家」に選ばれた。戦争で娘の婚約者が戦死したことを受けて、十字架とうずくまる女性を描いた作品「Youth Mourning」は有名。W. Mackworth Praed (1802-39)のバラッド詩 “Sir Nicholas at Marston Moor” (1830)では、清教徒革命(イングランド内戦)の舞台の一つとなったMarston Moorの戦い (1644) で、出陣する国王軍の夫を見送る妻と、敗北の知らせを受ける妻の2枚の挿絵を描いているが、顔に強い光を当ててこの場面での登場人物の気持ちを強く伝えている。 Smith_2
Cooke  William Cubitt Cooke (1866–1951). R. Brimley Johnson編纂のPopular British Ballads: Ancient and Modern (1894)第3、4巻収録の総数66枚に及ぶ挿絵のすべてをCooke一人で担当している点が、他のバラッド集の挿絵と大きく異なる点である。また、同じくR. B. Johnsonが編纂し、1892年にJ. M. Dent社より刊行されたJane Austenの小説10巻本にCookeは30枚の挿絵を寄せている事でも有名。 Cooke_1 & 2
Corbould Edward Henry Corbould (1815-1905). チョーサー、 スペンサー、シェイクスピアらの作品や歴史から題材を採った水彩画で有名。その他、テニスンの「アーサー王の死」(『国王牧歌』1856-85)の挿絵などの多くをヴィクトリア女王が求めたことでも知られる。 Hall
Crowquill ‘Alfred Crowquill’ — 本名はチャールズ・ロバート(Charles Robert, 1803–50) とアルフレッド・ヘンリー (Alfred Henry, 1804–72)のフォレスター兄弟。コミック本や子供向けの絵本などの廉価本で大きな人気を博した。’Crowquill’(カラスの羽根???)というペンネームがセールスポイントになって、宣伝効果が大きく、中流階級と労働者階級の垣根を壊したという歴史的評価を獲得した。The Illustrated London NewsPunchの寄稿者であり、Richard “Dickie" Doyle (1824-83)とJohn Leech (1817-64)と共にBon Gaultier [T. Martin] のThe Book of Ballads (1845)の挿絵を担当した。 Hall
Dalziel George Dalziel (1815-1902). 弟Edward (1817–1905) と一緒に1839年にダルジエル・ブラザーズを設立、ヴィクトリア朝時代のブルジョア階級向けの商業雑誌や書籍のために沢山の木彫版画を制作した。 Edward Learの Book of Nonsense (1862)、 Lewis Carrollの Alice in WonderlandThrough the Looking-Glassの挿絵も描いている。  Hall
Derby William Derby: 1786–1847. バーミンガムに生まれ、風景画家であったJoseph Barber (1757-1811)に学ぶ。1808年にロンドンに出て、肖像画や細密画の模写に手腕を発揮した。1838年に脳性麻痺になり、一時は言語機能を失い、半身不随になったが、数ヶ月後には奇跡的に回復し、息子のAlfred Thomas Derby (1821–73)の補助を得ながら制作活動を続けて、多くの作品を残している。 Miscellany
Garland Charles Trevor Garland (1855-1906). 親と子供、子供と動物、人と自然など、ヴィクトリア朝時代の感受性に合致した巧みな肖像画で親しまれた。Gallery 6 (Smith-2)ではNoel Patonの"Sir Launcelot”の挿絵を描いているが、’The Battle of Nancy’ (1477) を題材とした戦争画でも優れた技量を発揮して有名であった。 Smith_2
Green Charles Green (1840-98). イギリスの水彩画家。「新進気鋭の60年代挿絵画家」グループの代表格。A Christmas Carol その他のディケンズ(Charles Dickens, 1812-70)作品の挿絵で有名だが、ソーンベリー (George Walter Thornbury, 1828-76)のHistorical and Legendary Ballads and Songs (1877) なども手がけている。オランダのポスト印象派の画家ゴッホ(Vincent Willem van Gogh, 1853-90)からは、同時代の挿絵画家の中で最高であると賞賛されていた。 Smith_1
Hopkins Arthur Hopkins (1848-1930). 詩人ジェラード・マンリ・ホプキンス (Gerard Manley Hopkins , 1844-89)の弟で、ロンドン生まれの水彩画家。しかし挿絵画家として大きな成功を収め、London News (1872-1898), The Graphic (1874-1876) , Punch (1893-1902)などに挿絵を描き、また、ハーディやウィルキー・コリンズ(William Wilkie Collins, 1824 - 89)の小説に描いた挿絵も有名。 Smith_1
Hyde William Hyde (1859-1925). ハウスマンのA Shropshire Lad の初版は1896年に出版されたが、William Hydeが表紙をデザインし、8枚のカラー風景画を添えた挿絵付きの初版が1908年に出版された。しかしハウスマンはその色付きの挿絵が気に食わなかったそうで、理由は「下品」だからであるというエピソードが残されている。Agnes Miller Parker (1895–1980) のモノクロームの木版画が添えられたHarrap 版が1940年に出版された時にはハウスマンは既にこの世になかった(1936年没)。 Miscellany

Martin

John Martin (1789-1854). 19世紀イングランドのロマン派の画家、版画家。 1811年、23歳の時からロイヤル·アカデミーに絵画を出品し、1812年の『忘却の水を探し求めるサダク』の様に画面いっぱいに壮大な風景を描き出し、それによって天変地異の圧倒的な力や破局的な様相を現出させている画風で注目を集めた。旧約聖書、ミルトンの『失楽園』の挿絵入り本や油絵をもとにした版画作品は広く流布した。『最後の審判三部作』は代表作の一つ。『エドウィンとアンジェリーナ』は1816年作。 Miscellany
Macquoid Percy Macquoid (1852-1925). 舞台美術家。イングランド家具の収集家、鑑定家として、おもにCountry Life誌に寄稿し、家具の歴史について4冊の本を著している。若い頃にはイラストレーターとして週刊イラスト新聞The Graphicに投稿し、それがゴッホの目に止まり、「驚くべき優美さと柔らかな洗練された感情」が表現されている、と評された。 Smith_1
Parker Agnes Miller Parker (1895–1980). スコットランド南西部エアーシャー生まれの版画家、挿絵画家。20世紀を代表する木版師として有名。白黒のみのデザインを駆使してThe Fables of Aesop (1931)、Thomas Grayの"Elegy Written in a Country Churchyard (1938)、ハウスマンのA Shropshire Lad (Harrap, 1940)、シェイクスピアのRichard II (NY: Limited Editions Club, 1940)その他、ハーデイのThe Return Of The Native (NY: Limited Editions Club, 1942)その他、Edmund SpenserのThe Faerie Queen (NY: Limited Editions Club, 1953)等々、多くの作品に関わった。 Miscellany
Paton Joseph Noel Paton (1821-1901). スコットランドの画家、彫刻家、詩人。伝承とケルト神話に造詣が深く、『オーベロンとティターニアの諍い』など妖精を描いた作品で知られる。ロンドン滞在中にThe Art Journal の編集者ホール (Samuel Carter Hall)と知り合い、The Book of British Ballads (1842) に挿画を依頼される。他にも、シェリーの劇詩『鎖を解かれたプロメテウス』(1844年版)やシェイクスピアの『テンペスト』(1845年版)、コールリッジの物語詩『老水夫行』(1863年版)の挿画を手がけている。 Hall
Peake Mervyn L. Peake (1911-68). ファンタジー作家、詩人、挿絵画家。1943年から48年の間に、コールリッジの『老水夫の物語』(8枚の白黒の挿絵)、グリム兄弟の『グリム童話』(1812-15)、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』(1865)や『スナーク狩り』(1874-76)、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの『宝島』(1883)や『ジキル博士とハイド氏』(1886)などの挿絵を制作した。 Peake
Rackham Arthur Rackham (1867–1939). 18歳からウェストミンスター火災保険会社に勤める傍ら夜学の美術学校に通い、絵入り雑誌にスケッチを寄稿。1892年、25歳のときに勤めを辞し、創刊時の『ウェストミンスター・ヴァジェット』誌でイラストレーターとして活動をはじめる。1893年に初めて本の挿絵を手がけ、以後挿絵画家として生涯にわたり数多くの挿絵を制作した。Gulliver's Travels (1900), Grimm's Fairy Tales (1900), Rip Van Winkle (1905), Peter Pan in Kensington Gardens (1906), Alice in Wonderland (1907), Mother Goose: The Old Nursery Rhymes (1913) 等々。Some British Ballads (1919)には伝承バラッドのみ16篇のカラー挿絵を含む36作品が収録されている。 *BSJホームページ: (Gallery 3)
Scott William Bell Scott (1811-90). ラファエル前派の芸術運動に共鳴した詩人、画家であり、D. G. Rossetti (1828-82) や A. C. Swinburne (1837-1909) などと親交があった。詩集 Poems by William Bell Scott (1875) は、彼自身が描いた挿絵に彩られ、"The Witch's Ballad" などのアンソロジーピースを生み出した。ノーサンバーランド とその辺境の歴史やバラッド "Chevy Chase" に題をとった絵画群を残している。 Hall
 Small William Small (1843–1929). スコットランドの挿絵画家。Royal Scottish Academyで訓練を受けた後、1865年にロンドンに出て、たちまち多彩な画家・挿絵画家としての地位を確立した。絵画においては田園風景をテーマにしたものが多く、後年には貧しい者たちの苦しみを題材としたジャーナリスティックなテーマを表現した。George EliotのAdam Bede (1859)の口絵でも有名。  Smith_1
Waterhouse John William Waterhouse (1849-1917). イギリスの画家。神話や文学作品に登場する女性を題材にしたことで知られる。アーサー王物語の登場人物・騎士ランスロット(Lancelot)の愛を得られぬことを知った悲しみのあまりに死を選ぶ乙女を描いた作品、"シャロットの女" が、ウォーターハウスの最も有名な作品であろう。キーツの "La Belle Dame sans Merci"は1893年作。 Miscellany
Williams

J. L. Williams (c. 1815-77). 木版画家Samuel Williamsの息子。HallのThe Book of British Ballads (1844)で、”The Nut Brown Maid” (Child 73B)のopeningとendingを担当し、バラッド詩ではWilliam Julius Mickleの"Hengist and Mey”を担当、後にWilliam James LintonのMasters of Wood-Engraving (1889)で 高く評価された。

Hall

 (* BSJ=日本バラッド協会)